6月11日(日) 

 大会・シンポジウム
   「貝塚から読み解く暮らしの歴史  
           −千葉に密集する貝塚に迫る−」 
趣旨

 千葉県北部の考古学的地域個性として,“貝塚”をあげることができる。そのマクロ的・現象的特徴として,1)直径が100mを越える巨大な環状貝塚が多数遺されていること(大規模性),2)貝塚の分布密度が高く,至る所に貝塚があること(高密度性),3)しかも縄文時代のみならず古代・中世・近世・近現代と一貫して貝塚がつくられてきたこと(連続性),をあげることができる。こうした現象を,暮らしにおける空間利用方式の視座から見直し,貝塚の位置づけと,それを踏まえた貝塚の保存・活用の仕方について議論したい。
 そのために,まず,「千葉の貝塚と人々の暮らし」で貝塚をつくった人々の範域を遺跡の分布と貝塚をつくった人々の暮らしから捉える。次に,「貝塚・土塚・土器塚にみる土地利用意識」で,捨て場の中における貝塚の特異性を土地利用意識の側面から見出し,時間幅を持ちながらも一見まとまった土地利用単位に見える大規模環状貝塚がなぜ形成されたかを検討する。そして,「近現代の貝塚にみる漁民の暮らし」で,貝塚=縄文時代という認識に対して改めて警鐘を鳴らすとともに,近現代の貝塚が暮らしの歴史解明にはたす役割を見直し,千葉において稠密に分布する古代以降の貝塚研究への招待とする。以上の基礎的研究成果を踏まえて,「千葉市貝塚群の将来を考える―遺跡の多面的価値の高度利用を目指して―」で,貝塚を形成した人々の範域保存を前提に,現在の地域計画論では無意味と評価される一巨大環状貝塚だけを標本的に史跡とし,出土品を解説的に展示する博物館を併設して終わる考古資源の低利用型保存でなく,地域の生活者の暮らし改善運動と連動するオルタナティブな保存を提案する。


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 日本に残されている豊かな文化財を守り・学び・正しく活用して後世に伝えることを目的とする、市民中心の全国団体です。