平成19年9月21日(金) 読売新聞朝刊 京葉版 

貝塚群 遠い世界遺産  

 開発制限で尻込み     周辺自治体 暫定リスト申請見送り

 千葉市若葉区の加曽利(かそり)貝塚をはじめとする県内の大規模貝塚群の、世界文化遺産への登録を目指す構想が、暗礁に乗り上げている。同市などから、 登録による開発制限が周辺住民に与える影響を懸念する意見が出たため、県が20日、同遺産の「暫定リスト」掲載に向けた提案書の作成を見送る方針を固めた もの。「地域活性化の目玉に」と期待していた地元の民間団体からは落胆の声も上がっている。

 県内の東京湾東岸域には、加曽利貝塚など、縄文時代の中期から後期にかけて形成された直径100メートル以上の大規模な環状貝塚が広く分布。縄文時代の人々の暮らしぶりを知る上で貴重な遺跡として評価されている。

 文化庁は昨年、ユネスコ(国連教育・科学・文化機関)に提出する「暫定リスト」に掲載する候補地を、初めて全国の自治体から募集。今年度も引き続き、今月28日を期限に募っている。

 この“チャンス”に県内でも昨年、いずれも国指定史跡である、加曽利貝塚と堀之内貝塚(市川市)、山崎貝塚(野田市)などの「貝塚群」の 暫定リスト掲載を目指す案が浮上。このうち加曽利貝塚の地元では「千葉東ライオンズクラブ」が、加曽利貝塚の世界遺産登録を活動の重点項目に掲げ、子供向 けの課外教室を開催するなど、地元の関心を高めるための活動を行っている。

 しかし、世界遺産に登録されると、遺跡そのものだけではなく、周辺も「緩衝地帯」として、開発が制限される。千葉市教委は「住宅街に隣接する加曽 利貝塚の場合、周辺の住民に不便をかける可能性があり、範囲を定めるのが難しい」と打ち明ける。国指定史跡の貝塚はすでに法律で十分に保護されていること もあり、同市教委は「登録によるメリット、デメリットを見極めなければ」と継続協議を県教委に求めた。

 暫定リスト入りに必要な提案書は、県と市町村が共同で提出することになっている。県教委は、20日を回答期限に市町村から候補を募っていたが、想 定していた8自治体のうち、国指定史跡を持つ千葉市、市川市、野田市が「課題が多く、手を挙げられない」「引き続き検討したい」と、20日までに相次いで 見送りを決定。このため県内から候補地を提案することは困難となった。

 文化庁が今後、国内候補地を追加募集するかどうかは未定。だが、県教委は「今回がゴールではない。今後も継続して協議していく」とし、世界遺産登録について議論される中で、県民に文化財保護の意識が浸透することを期待している。

  「千葉東ライオンズクラブ」第一副会長の田部井正次郎さん(71)は「非常に残念だが、長期的な取り組みになると予想しており、あきらめるつもりはない。加曽利貝塚には特別な価値があり、チャンスはある」と、登録に向けた今後の活動に意欲を見せている。

 ■暫定リスト■ 将来、世界遺産に登録する計画のある物件を掲載するリスト。この中から、準備が整ったものを政府がユネスコに推薦。専門機関による調査を経て、世界遺産委員会が登録の可否を決定する。暫定リストへの掲載は、登録までの長い道のりの第一段階で、県・市町村による提案はそのさらに前段 階となる。

(2007年9月21日(金)  読売新聞朝刊 京葉版 原本JPEG 224kB

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